[JIC009] 井上潤一、野田悟子、宇井定春、大熊盛也

オオシロアリ腸内原生生物の水素生成関連遺伝子群の多様性解析
日本農芸化学会関東支部会2008年度大会, 19ページ, 2008

シロアリは代表的な食材性昆虫であり、腸内に共生する微生物との共同作業により効率よく木質バイオマスを分解している。木質バイオマスの主要な分解者である原生生物は代謝産物として水素を生成することが知られ、これまでに我々は、木質バイオマスからの水素生産をめざし、原生生物ヒドロゲナーゼの強力な水素生成活性等の有用な特徴を明らかにしてきた。本研究では、多様な原生生物群によって構成されるオオシロアリ腸内共生系にはより多くの機能的に新規なヒドロゲナーゼが存在すると予想し、ヒドロゲナーゼ遺伝子の多様性について解析を行った。現在進行中の原生生物メタトランスクリプトーム解析情報をもとに38種類の鉄ヒドロゲナーゼ相同配列を取得した。これらの配列は電子伝達経路であるFe-Sクラスター結合モチーフが2縲鰀4領域あり、NAD(P)H結合モチーフを有する等の特徴を有していた。系統解析の結果、腸内の原生生物を構成する2群に相当すると予想される系統群に分かれ、両群の間ではドメイン構造が異なっていた。これらの結果は水素としての還元当量の排出経路が複数存在することを示唆すると考えられる。

論文番号:JIC009