[JIC001] 井上潤一、矢崎伸一、大槻隆司、宇井定春、三村精男
干潟複合微生物系モデルによる森林・河川と干潟の微生物生態学的解析
第7回マリンバイオテクノロジー学会大会要旨集, 2004
【目的】干潟は陸と海洋の水域を繋ぐ場である。その汽水域としての複雑な地形は、数多く微生物の活躍する場を提供し、物質生産や環境浄化が絶え間なく行われている。我々は、河川上流の森林から干潟、干潟から海洋への生態学的な流れに注目し、森林が干潟微生物相に与える影響、干潟微生物相が海洋に与える影響を解析し、汽水域、干潟の生態学的な役割を提示することをもくてきとした。【方法】干潟土壌、汽水からクロレラ、珪藻等の藻類を含む複合微生物系を分離した。干潟流入物質モデルとしてフミン酸、森林微生物モデルとして森林土壌由来真菌を用いて動態解析を行った。藻類によるクロロフィル-a生産量を測定し、生物生産性の指標として評価した。【結果】未処理のフミン酸は干潟藻類の増殖を抑制した。しかし、森林土壌より分離した真菌によって分解したフミン酸は、干潟細菌の活動を活発にし、最終的に藻類の活動を扶助することがわかった。又、日本各地の干潟の鉄、計算、CODと生物生産性の間に相関関係を得られた。【考察】干潟は様々な物質を吸収して分解できる場であるが、森林土壌フミン酸が未処理のまま干潟に流入すると、生物生産性は下がることを本研究で示唆した。干潟は単に生産・浄化の場ではなく、河川上流の森林から連綿と続く微生物的な作用が集積した場と考察した。
論文番号:JIC002